HOME|茜色ジレンマ日記 text by 永利祐太




『なずな』まもなくです
2017年11月22日|diary

男、34歳。独身。性格は優柔不断、人に嫌われたくないから、自分の意志は二の次。そのくせ、こだわるところにはとことんこだわる。しかも、ももいろクローバーZが好き。

 

そんな男に恋愛を語る資格などないのかもしれない。いや、語ったつもりはないのだ、決して。そんなたいそれたことではない。ただ、ひと組の男女が、季節が移ろいゆくなかで、さまざまな経験をしていく、その過程を描くうちに、大きくジャンル分けをあえてするならば、これはラブストーリーなのかもしれない、と行き着いただけなのだ。

 

『なずな』は、誰かを強く想うがゆえに胸を苦しめられていく人々の物語だ。

 

時に、狂おしいほど相手を想い、時に、顔を見るのが嫌なほど拒絶する。今日は好きだけど、今日はきらい。素直になれない五人の感情、その行き先を、ぜひ劇場で感じとってみてください。

 

アカネジレンマ第十三回公演『なずな』

出演/内野遥香、芝田遼、吉田のゆり、仙石智彬、宮崎泰樹

2017年11月23日(木)〜26日(日) 於/江戸川橋・絵空箱

http://www.akanedilemma.com/info.html






2017年のご挨拶
2017年01月10日|diary

一日一箇所かならず身体のどこかの部位が痛いです。頭痛薬いくらあっても足りません。どうでもいいラブソングの、歌詞が胸に沁みることがあります。こうして、確実に向かってゆく先にある「なにか」が「老い」であるならば、新年あけましておめでとうございます、というご挨拶も、素直に言えなくなっていくのかもしれません。

 

それでも。それでもみなさま。

 

みなさまのご健康と、ますますのご活躍をお祈りして、新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 

昨年の活動を簡単に振り返らせていただきますと、まずアルバム二枚をひっさげた五大ドーム公演からはじまり、夏は恒例となった桃神祭、それからアメリカ横断ツアーがあり……あ、すみません、アカネジレンマの活動ではなくももいろクローバーZの活動でした。すみません。

 

劇団としましては、久しぶりに『A』という公演が打てたのが嬉しかったです。やっぱりこの場所にいられるのは何よりも幸せだと思いましたし、限られた時間のなかであと何本戯曲を書けるのだろうとも思いました。しかしそう考えると、物語の出発点と着地点がぜんぜんちがう、ああいった突飛な話も書ける勇気が出るのであります。

 

いま、静まり返ったこの部屋には、デスクのうえにある時計の針の音しか聞こえません。インクの切れた万年筆にブルーブラックを注入し、ぼくはまた、まっしろな原稿用紙に向かうのです。

 

アカネジレンマ 永利祐太

 






『A』終演に寄せて
2016年11月08日|diary

さまざまな才能が、ぼくの周りの世界にはあふれていた。

 

漫画を描ける人がうらやましいと思った。音楽を奏でられる人、歌がうまい人にあこがれた。いい文章を書く人に嫉妬した。しゃべりがうまい人、どこにでも行ける冒険心を持つ人、笑顔がすてきな人たちを見て、あんなふうになれたらなと思った。そういう才能を、劇中では超能力に置き換えて描いた。ぼくも、彼らのような能力者になりたくて、芝居を書き続けてきたのだ。

 

しかし、ある時期を境に、自分の平凡さに気づくようになった。おもしろい物語を書く人も、想像を越えた演出をする人も、ぼくの周りにはたくさんいた。それでも、書くことはやめられなかった。

 

『A』は、亡くなった人間と会話をする、という、どうにもならないことをどうにかする物語であると同時に、どうにもならない才能というものについての物語だ。ご来場いただいたみなさまにも、自分のなかにある、普段は気づかない能力に触れるきっかけになってくれれば、このうえない幸せである。

 

ご質問の多かった、ナカソネの能力については、劇中の細かい世界設定に関わっていて、最終的な台本ではそれらの説明をすべてカットした。散りばめられた手がかりとしては、「そんなの日常生活してたら、みんな思い当たる節があるんじゃないのか」「私たちの能力はその延長線上にあると言っていい」というヒデヨシとヒミコのやりとり。ではナカソネはなぜ、「思い当たることはないの?」というサッチャーに対して、「ないよ」と言ったのか。みなさまのご想像にお任せしたい。サッチャーの「召喚」の際に発せられた文言は、エドガー・アラン・ポーの詩『アナベル・リイ』より引用させていただいた。また、金魚のルウルウの名前は、フローベール『純な心』より引用させていただいた。ほんものの金魚を使うのは不安でもあったが、登場人物の一員として大いに活躍してくれた。これからも長生きしてほしい。

 

最後に、こんな個人的な物語を、全身全霊で体現してくれた六名の役者たちに感謝と敬意を捧げたい。ありがとう。みんなといるときにだけ、ぼくは特別な力を持った能力者になれる。

 

永利祐太

 

 

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◉上演記録

 

 アカネジレンマ第12回公演『A』

 2016年11月3日(木)〜 5日(土)

 Performing Gallery & Cafe 絵空箱

 

 作・演出:永利祐太

 

 キャスト

 チヅコ/小林知未

 ナカソネ/宮崎泰樹

 ヒデヨシ/かしむらまこと

 サッチャー/神谷はつき

 ホウジョウ/奥田満

 ヒミコ/山内理沙

 

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『A』まもなくです
2016年10月31日|diary

芝居というのは、書かれた言葉に沿って上演される。これは当たり前のことだ。しかし、その一方で、せっかく書いたのに泣く泣くカットした言葉や、いつの間にか消えてしまった言葉もある。今回のこの芝居でも、小林知未さん演じる役に、「好きでした、この場所が……。だから、幸せでした」という言葉があった。最終的に、それは感情の説明をしすぎだと思いカットしたので、この言葉は芝居には出て来ない。

 

これはもちろんその一例で、ひとつの芝居には、書かれなかった言葉が無数に存在する。この一ヶ月間、一度言った言葉は二度と取り戻せないという演劇の基本を胸に刻みながら、稽古を続けてきた。その日々と、役者たちに言った数々の言葉もまた、取り戻すことができないものとなってしまった。そう考えると、言えていない言葉、言えなかった言葉には、まだ言える機会があるのではないか。台本に書かれなかった言葉も、書かれなかったからこそ、いつかまた、書く機会が訪れるかもしれない。そう思いながら、日々を過ごしてきた。

 

長い年月を経て、私はようやく「この場所」に戻ってきた。そして、数ヶ月前に書かれなかったあの言葉を、今更ながらに思い出しているのである。

 

アカネジレンマ第12回公演『A』、まもなく本番です。ぜひご来場ください。

 

2016年11月3日(木)〜 5日(土) 江戸川橋・絵空箱






犬との思い出
2016年04月06日|diary
何才のころだったか、まだ私も妹も弟も小学校の低学年の時分だったように思う。親戚が飼っているマルチーズが子供を産んだというので、祖父母が子犬を一匹、もらってきたのだった。

まだ生まれて間もない犬であったが、それまで暮らした家とはちがう場所に連れてこられ、ちがう人間たちに囲まれて、体を震わせながら怯えていた。我々子供たちも子供たちで、動物に触れるのも初めての経験で、噛まれたり吠えられたりするのを恐れ、近寄ることができなかった。父の腕に抱かれる犬を、我々は三人かたまって遠目から眺めていた。

それから、我々も成長するにつれ、犬との生活にも慣れてきた。隣の家の芝生を駆け回ったり、鹿児島に旅行に行ったりもした。私が上京してからの四年間は、たまに実家に帰っても、犬は私のことを憶えてはいなかった。それでも、数日を共に過ごすと、私を家族として思い出してくれていたように思う。

誰よりも、犬は父になついていた。子供の我々が犬を怖がっていたから、面倒を見るのは父だった。父が脱サラして農業を始めてからは、毎日田畑に連れていっていたようだ。東京にいる私は、そんな父と犬との生活を知らないのだが。

以前使っていた私の携帯電話には、今でも保護して捨てないでいるメールがある。もう九年もまえのものだ。送り主は父で、父がメールを送ってきたことは、今まで二、三回しかない。そのうちの一通である。

「今日、チャッピーがなくなりました。十五年間、よく生きました。特に、農業をはじめてからは、ずっと一緒でした。癒されたし、助けられました。チャッピーはもういません。涙が出ました」


チャッピーは、マルチーズと野良犬の雑種であった。小柄で、全体の白い毛並みのなかに、ところどころ茶色い部分があった。チャッピーというのは、当時我々が読んでいた漫画に登場する犬からつけられた名前だった。

愛犬の死という悲しみも冷めやらぬ数ヶ月後、母親から「新しい犬を買ってきました」というメールがきたときは呆然とした。耳が大きいからミミと名付けられた新しい家族とは、私が頻繁に実家に帰らなくなったせいで数回しか会っていない。帰省するたびに喉を痛めるほど吠えまくり、とうとう私にはなつかなかった。そのミミも、十年ほど生きて、つい先日、亡くなってしまった。

二匹の犬が、私の家族とともに時を刻み、後ろへ通り過ぎていった。父は先日、六十になり、還暦を迎えた。





奥田 満 作・演出|公演情報
2016年03月08日|news
春のあたたかさがようやく到来した今週末、詩的で情緒あふれる物語と腕の長さで定評のあるあの男がいよいよ動きだします。長い冬眠から覚めたような久々の新作公演に、いやがおうにも期待が膨らみます。


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NICEPLAN 第14回公演『空部屋メロウ』

2016年 3月11日(金)〜 13日(日)
@東中野RAFT


<作・演出>
 奥田 満

<出演>
 坂本理沙
 内田充昭
 吉田のゆり
 仙石智彬(ファルスシアター)

<料金> 
 2,200円

<タイムテーブル>
 3月 11日(金) 19:30
    12日(土) 15:00 / 19:30
    13日(日) 12:00 / 16:00

<あらすじ>
ひとり暮らしを始めるため、部屋探しをしているみさき。
やっとの思いで巡りあったのは、日当たりの良い、やや古びたアパートの一室だった。
契約前に、ふとした出来心でその部屋に忍びこむと、休みのはずの不動産屋が内見の客を連れてやって来る。
その客は、みさきの実の姉であった。
しかし姉は、婚約者と共に遠い地で幸せに暮らしているはずである。
それが何故、ひとり暮らしのための部屋を探しているのか。
ひとつの「時間」のはじまりと、ひとつの「時間」の終わり。
姉と妹の関係を軸に、空部屋で繰り広げられるポップでメロウな3月のお話。

<お問い合わせ>
 http://niceplan.jimdo.com/

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2016年のご挨拶
2016年01月01日|diary
新年あけましておめでとうございます。

過ぎ去った年のことを今さら振り返るのもはばかられるのですが、アカネジレンマは前年、結成十周年を迎えていました。誰にも知られることなく、ひっそりと迎えたこのアニバーサリーイヤーを、我々は本当にひっそりと通過してしまいました。したがって、十周年とはいえ活動期間自体をぎゅっとすると実質、六年ぐらいのものではないかと思います。カレンダー通りの時間概念を持たない劇団、アカネジレンマを、本年もよろしくお願いいたします。

2016年 元日



▲ 新作公演台本は鋭意執筆中。詳細はしばしお待ちください。





硝子のステッキ
2015年05月04日|diary
カーテンから射し込む陽の翳りから、私は長いこと眠っていたように思われる。私の部屋には時計がなかった。自分がいつ眠ったか、どれくらい眠っていたかの判断もつかずに、わが睡眠と世のなかの時の流れを疑い問うた。事実、私はずいぶんと惰眠を貪っていたようであった。普段は明るいと眠れない性質にも拘らず、電気もテレビもつけっぱなしで、白昼色の明かりのしたで、体力の続くかぎり横たわっていたのであった。

眠っているあいだ、私は多くの夢を見た。

そのほとんどを、目覚めの瞬間に忘却してしまったが、覚えている夢はいくつかある。


夢のなかで私は、すべてのものごとを面倒くさがっていた。日々の労働から離れ、掃除洗濯家事全般から離れ、書くことから離れていた。いっさいの人間関係を断ち切り、どこかはわからないがおそらく東京ではない海沿いの町に暮らしていた。鸚鵡を飼いルウルウと名付け、それが生き物と呼ばれるものとの唯一の接触となっていた。例外として、私がしていたのは本を読むこと、それによって何の役に立つかもわからない知識を得、少しばかり頭のよくなった振りをして、充足感とむなしさを同時に感じていた。

目覚めると私は声を失っていた。風邪ではなかった。体調自体はすこぶるよかった。声が出ない、というのは初めての経験だった。発語しようとすると声はかすれ、私の口のなかから、世間に出てゆくことを拒んだ。その声はいまだに回復していない。それどころか、自分がどうやって声を発していたのか忘れてしまっていた。しかし、心配はいらなかった。失った声の代わりをしてくれる人は、幸いなことにたくさんいたからだった。

声を失った私にできることは、書くことしかなかった。私は再びキーボードを打ち始めた。これまで私が「書いてきた」数々の物語は、声とともにどこかへ消えてしまったような気がした。夢のなかで何もかもを面倒くさがっていた私は、ふたたび、面倒くさいもののほうへ行こうとしていた。それは赤茶色の大地を、いつ折れるとも知れない硝子のステッキを支えに歩くような、永い旅になるはずだった。





『場末とベリー』公演情報
2014年09月01日|news
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Basue and Berry episode 00

『場末とベリー』


2014年 11月 7日(金) 〜 8日(土)
ARENA 下北沢

<脚本・構成>
永利祐太

<出演>
村上亜利沙
川口雅子

<タイムテーブル>
2014年11月
7日(金) 19:30-
8日(土) 19:30-
*受付は開演の60分前、開場は開演の30分前です。

<料金>
前売 1,500円 + 1drink 500円
当日 1,800円 + 1drink 500円
*日時指定、全席自由

<チケット発売日>
2014年 9月 22日(月)

<公演会場>
ARENA 下北沢
東京都世田谷区北沢2-2-14 モアイ茶沢4F

<お問い合わせ>
場末とベリー
E-Mail : basue.and.berry@gmail.com
Website : http://basue-and-berry.jimdo.com/

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以上の情報からわかるように、村上亜利沙と川口雅子の二人芝居である。キャストが女性のみであること、しかもたった二人だけだということ、これは私の長いようで短い演劇人生のなかで、じつは、はじめてのことである。だからこそ、やりがいがある。しかし、だからこそ、引き受けた、というわけではない。それは、この二人の女優が相当に魅力的で、なかなかに手ごわい相手だからに他ならない。秋の夜長に、下北沢のおしゃれなバーで、この二人の掛け合いをじっくり観ていただくことが、みなさまにとって、収穫の秋になることを願っている。(永利祐太)





『x+y』稽古状況
2014年07月03日|diary
すでにお知らせしているように、アカネジレンマが「せんがわ劇場演劇コンクール」の一次予選を通過し、本選に駒を進めることになりました。我々の本番は7月13日の日曜日、上演時間は40分、一発勝負の本番に向けて、稽古をしている次第です。日本代表選手たちが日の丸を背負って、ブラジルで勇敢に闘っていた傍ら、僕たちも演劇界の片隅でひっそり、闘志を燃やしていたわけです。

稽古開始は、『異邦人』という約二年ぶりの本公演が終わって三週間後。自慢じゃないが、アカネジレンマは稽古初日に完成した台本がある、その歴史をかたくなに守ってきました。しかし、その歴史は、今回で止まることになりました。だってだって、三週間だよ、書けるわけないじゃない。と、言葉には出さず、ひたすら出演者には謝るのみ。そもそも、うちは台本が早い、というわけではなく、とりかかっている時間が早い。だから僕は差し引いて見れば、他の作家さんたちよりも筆が遅い、ということになるのです。

劇団員はもちろん、出演者のみんなからも多くの意見をいただきました。稽古初日に渡した台本から一転、二転、さらに三転し、ようやく完成にこぎつけたのであります。僕自身の力は少なく、みんなに書かせてもらった。稽古場でみんなの台詞を聞きながら、動きを見ながら、この物語にふさわしい結末を迎えた。謙遜とかではなく、今回のこの台本は、そういうふうにして、書き上げることができました。

本番まで残り10日。あとはもう、全力で稽古をするのみです。



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